天才の栄光と挫折

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  さくら花 おそしと待ちし世の人を 驚かすまで咲きし今日かな  樋口一葉


渋谷区が同性カップルをパートナーとして公的に認めることになった。世田谷区も検討しており、この流れは加速するだろう。
その事が良いことなのかどうかわからないが、天才数学者アラン・チューリングが今の時代に生きていれば、不幸な人生の終末を迎えることはなかった。

「イミテーションゲーム」という映画が上映されている。
第二次世界大戦中、ドイツ軍が作った世界最強の暗号「エニグマ」を、天才数学者アラン・チューリングが解読する話だ。


天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫)天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫)
(2008/09/03)
藤原 正彦

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「イミテーションゲーム」を観たのは、アラン・チューリングに対する興味からだった。
天才数学者アラン・チューリングのことを初めて知ったのは、藤原正彦さんの「天才の栄光と挫折」という本によってであった。
暗号解読と言うトップシークレットについて、明らかな史実はほとんどわからないはずだから、映画の内容は想像によって作られたものだろう。しかしシナリオは良くできており、映画としても十分楽しめた。

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第2次大戦中、イギリスは食料や軍需物資の半分をアメリカから輸入していたが、ドイツ軍の潜水艦Uボートによって、毎月30万トン以上の船が撃沈されていた。
しかし暗号が解読された7月は12万トン、11月には6万トンに減少し、ドイツはUボート作戦を1年9カ月間中止している。

その後暗号をさらに複雑化したドイツ海軍は、1942年8月にふたたび大西洋でのUボート作戦を再開し、9月には48万トン、10月には62万トンの輸送船が撃沈され、イギリス所有の商船が無くなるほどだった。一方、撃沈されるUボートは月に数隻にとどまっていた。

この新暗号は解読に困難を極めたが、1942年の暮れに解読され、被害が急減するとともに、1943年1月から5月までに100隻近くのUボートが撃沈され、5月下旬にはUボート作戦は中止された。


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 エニグマ

もし「エニグマ」が解読されていなければ、イギリスはドイツに降伏し、第二次大戦の終結は2年遅れただろうと言われている。
そうなれば、アメリカと日本の戦いも大きく変わっていたはずだ。「エニグマ」の解読はそれほど大きな出来事であったのに、1970年頃までその事は秘せられていた。
イギリスはドイツから没収した数千台のエニグマ機を、信頼できるものとして旧植民地に使わせ、それを盗聴していたので解読の事実を伏せていたためだ。

イギリスを救い、世界の歴史に少なからぬ影響を与えた天才数学者アラン・チューリングは、戦後数学の研究に戻ることはできず、最後は不幸な結末を迎えることとなった。


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 アラン・チューリング

1952年、彼は街かどで知り合った若い男性と一夜を過ごした。その後、自宅に空き巣が入り、アラン・チューリングは容疑者として若い男の名を告げたが、一夜を過ごしたことまで話してしまった。

当時ホモセクシュアルは違法であり、彼は逮捕され有罪の判決を受けた。留置場に入るか女性ホルモン注射で性的機能を失うかの選択に対し、彼はホルモン注射を選んだ。
1954年6月、彼は青酸カリで自殺した。

2013年、アラン・チューリングに対しエリザベス女王による死後恩赦が公式に認められた。

The Independentの記事

キャメロン首相は次のような声明を出している。
「アラン・チューリングは傑出した人物であり、ドイツのエニグマ暗号を解読したことで、第二次世界大戦においてこの国を救うため重要な役目を果たしました。
チューリングの貢献は無数の人々の命を救いました。かれはまた、現代的コンピューティングの父とも称される多大な科学的業績を通じて、この国に大きな遺産を残しました。」

英国を救うとともに、機械による計算を可能にする人工知能理論を提示し、コンピューターの先駆けとなるチューリングマシンを開発した天才数学者アラン・チューリングの人生は、同性愛によって悲劇的な幕を閉じた。

生命保存という最も重要な自然法則に反していながら、キリスト教の倫理が入るまで同性愛は大した問題ではなかった。
古代ギリシャでは同性愛は普通のことだったし、日本でも戦国時代は男色が普通で、織田信長の近習森蘭丸はホタル侍と言われていた。
もしかしたら、渋谷区の決定も大した問題ではないのかも知れない。

人間は生まれる環境を自分で選んで生まれてくるはずであり、そうだとしたら性同一障害の肉体を選んで生まれて来ることにも意味があるのかも知れない。
しかしそのことを通して一体何を学ぶのだろうか。




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