日本語の「ハ」と「ガ」

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以前の記事、「真理は言葉」の中で、数学者・哲学者であるバートランド・ラッセルの「真理とは、主語と述語が一致すること」という定義をご紹介しました。
それは例えばコップを、「これは本です」と言えば誤りですが、「これはコップです」と言えば主語と述語が一致するため真理になるという意味です。

しかしコップに対して、「これは水を入れるものです」と機能を述べることも正しく、あるいは、「これはガラスです」と材質を述べることもできます。もしそれがバカラのコップであれば、「これはバカラです」と価値を述べることも可能です。
このことは、見る角度、視点によって、物事の正しさがいくつもあることを表しています。

世の中の争いの多くが、自分の視点を絶対視し、人の視点を認めないことから生じますが、これは人間が自分の見ているものしか信じないことを物語るものです。
シーザーの言葉「多くの人は見たいと欲するものしか見ない」は、人間が自分の価値観から脱することがいかに難しいかをあらわす言葉です。

ところでラッセルは、「Snow is white」(雪は白い)というように、これ以上単純化できない主語と述語の形を、「原子命題」と名付けました。

これに対し評論家の森本哲郎氏は、それ以上分解できないはずの原子命題が、日本語ではさらに二つに分かれるといいます。
つまり「SPである」と、「SPである」の二つです。


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『日本・日本語・日本人』(大野晋 森本哲郎 鈴木孝夫共著)の中で森本さんはこう説明しています。

『この二通りの日本語の表現は、一見同じことを言っているように思われるが、よく考えるとどこか違っている。どこが違うかについて、ほとんどの日本人は明確に答えられない。
国語学者のあいだでさえ、諸説紛々たる有様にもかかわらず、こうした「ハ」と「ガ」の使い方は、日本人なら子供でも間違えることはない。

「ぼくは行かない」とは言っても、「僕が行かない」などとは言わないように、「東京は人口が多い」とは言うが、「東京が人口は多い」などとはだれも口にしない。
とすれば、ラッセルが論理の原子とみなした「S is P」は、日本では原子のなかの陽子と電子ように、それ以上分割できることになる。
そして私たちは、このような思考の“単位”を無意識のうち、自在に使い分けていることになる。たとえば「東京が人口は多い」などという表現は通用しないけれど、「東京の方が人口は多い」とほうをつけ加えるなら、それは決しておかしくない。・・・』

森本さんが述べているように、「ハ」と「ガ」の使い分けは日本人なら誰でも出来ることで、そのことを意識することさえありません。

ところが過日、NHKの若い男性アナウンサーが、子供でも間違わないはずの「ハ」と「ガ」を誤って使ったのには驚きました。
余りのことに唖然として、何と言ったのか覚えていないのが残念ですが、子供でも間違えるはずのない助詞の使い方を、NHKのアナウンサーが間違える時代になったのです。
こういうのを、世も末というのでしょうか。NHKが抱える様々な問題が、また一つ露呈した気がします。

ラッセルと森本哲郎さんを持ちだして長々と述べたのは、このことを言いたかったからです。

「ハ」と「ガ」の使い方を間違うようになった理由は、多分ネット上の表現に影響されたものでしょう。ネットでは、例えば次のような表現を良く見かけます。
「自民党の新ポスターが発表」

「自民党の新ポスターが発表された」が省略されたものでしょうが、もしかしたら、「自民党が新ポスターを発表」のような他動詞との区別がつかない人が増えたのかも知れません。

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ところで、本を紹介する時はAmazonで紹介していますが、昨年のAmazonの日本での売り上げは、なんと77 億ドル(7700億円ex100円)であったことが公表されました。
7700億円という売上は、小売業では9位の高島屋(8581億円)との10位のエディオン(7590億円)の間に位置します。通販の伸びから見て、近い将来1兆円を超えるでしょう。

問題なのは、日本にあるAmazonは倉庫扱いのため、税金を支払う必要がないということです。
日米の租税条約で決まっていることで、Amazonが悪いことをしている訳ではありませんが、日本に税金が落ちないのは面白くありません。できるだけ国内通販を利用したいのですが、中古本の取り扱いはAmazonが便利なので残念ながら目をつぶっています。

ところで、Amazonの注文画面に「お急ぎ無料便」の表示が出ています。
無料なら利用してみようかと思いますが、実は利用後に、年会費3900円が引き落とされる仕組みになっているようです。
アマゾンプライム0120899280に電話して解約する事ができるようですが、面倒ですので、最初から利用しないのが賢明です。お気をつけください。

尚、コメントのご配慮は無用に願います。

Amazon物流センターの過酷な労働

 



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コメント

Re: タイトルなし

KOさん

いろいろ教えていただきありがとうございます。
提示いただいた例で、「は」と「が」の特徴がよくわかります。
子どもでも間違うことのない用法ですが、学校で習った記憶がありません。
NHKのアナウンサーが間違っているところを見ると、
これからは学校で教えないといけないのかも知れません。

日本語の多様性は、日本文化の奥深さに通じていると思います。
言葉の乱れは文化の破壊であることを、マスコミの人間は充分承知してほしいものです。

最近の記事ではコメント欄を閉じていますが、このようなコメントをいただくと、
考え直した方が良いのかと思います。
ありがとうございました。

2014/05/31 (Sat) 17:29 | パック #- | URL | 編集

今頃、投稿して申し訳ありません。
助詞「は」と「が」は次のような役割分担をしていると思います。
【その1】
「サメ,クジラ,マグロ}の中で哺乳類はどれか」(1-1)という質問に対する答え
「クジラが哺乳類だ」(1-2)は、サメやマグロに対する答えとしての主張は否定的で、クジラのみを強く肯定的に主張しています.
そこで、主部と述部の関係(結び付き)は次のように示すことができます.
  サメ ・・・弱・・・ 哺乳類だ
 クジラ -強- 哺乳類だ
 マグロ -弱- 哺乳類だ
これに対して(1-1)の質問に、「クジラは哺乳類だ」(1-3).と答えた場合、クジラが答えであることは肯定していますが、サメやマグロについては肯定も否定もしていません.
そこで、主部と述部の関係は次のように示すことができます.
 サメ ・・・?・・・・哺乳類だ
 クジラ --- 哺乳類だ
 マグロ・・・?・・・ 哺乳類だ
【その2】
生まれて初めてキリンを見た子どもが「うわー、首が長ーい!」(2-1)と言った場合、自分の知っている(動物の)首と比べて長いと主張していると考えられます.
そこで、主部と述部の関係は次のように示すことができます.

 犬    首・・・弱・・・長い
 猫    首・・・弱・・・長い
 キリン  首 -強- 長い
 スズメ  首・・・弱・・・長い
 人    首・・・弱・・・長い
これに対して学校の先生がクラスの生徒に「歯はカルシウムでできています」(2-2)と言った場合どの(誰の)歯もカルシウムでできていると主張していると考えられます
そこで、主部と述部の関係は次のように示すことができます.

 太郎   歯--カルシウムでできている
 花子   歯--カルシウムでできている
 ヨシオ  歯--カルシウムでできている
 犬    歯--カルシウムでできている
 ネズミ  歯--カルシウムでできている
どの「a」についても言えることではないのだが、この「a」については「A」である
という場合は「が」を使います.
どの「a」についても「A」であるという場合は「は」を使います。
【その3】
いつも汚れていた窓をある日、奥さんが拭きました.数時間後、その窓を見た夫が
「窓が美しい!」(3-1)と言った場合、いつもより美しくなっているという意味で言っていると考えられます.
そこで、主部と述部の関係は次のように示すことができます.
 過去  窓・・・弱・・・美しい
 今   窓 -強- 美しい
 未来  窓・・・弱・・・美しい
これに対して、理科の授業のはじめに先生が「地球は太陽の周りを回っている」(3-2)と言った場合、地球はいつでも太陽の周りを回っていると主張していると考えられます.
そこで、主部と述部の関係は次のように示すことができます.

 過去  地球--太陽の周りを回っている
 今   地球--太陽の周りを回っている
 未来  地球--太陽の周りを回っている
いつの「a」についても言えることではないのだが、今の(その時の「a」について)
は「A」であるという場合は「が」を使います.
いつの「a」についても「A」であるという場合は「は」を使います。
「いつも言えることではないのだが・・・」とか「どのaについても・・・」とか言わなく
ても「は」と「が」を用いれば相手に意味を伝えることができるのが日本語の素晴らしい
ところの1つではないかと思います.
長々と書き申し訳ありませんでした。http://www.k3.dion.ne.jp/~okayasu1 もご覧頂けると光栄です。

2014/05/31 (Sat) 14:55 | KO #- | URL | 編集
Re: 助詞「は」と「が」

周作さん

ご説明いただいた「は」と「が」の定義で、日本語の用法のかなりの部分が説明できるようです。
ありがとうございました。

言葉は意識を表すものですから、外国語にない表現を多く持つ日本語は、日本人の心と感情の豊かさを表すとともに、心に映る自然の豊かさを表しているのだと思います。
「は」と「が」から、もう一度日本人論を考えてみると面白そうです。

久しぶりにこの記事を読んでみて、Amazon以下の記述は蛇足でした。

2013/10/27 (Sun) 13:28 | パック #- | URL | 編集
助詞「は」と「が」

「は」と「が」の使い分けは日本人でも難しく、また上手く説明できない問題ですね。私は次のように考えています。

 まず「は」1主語を記述するもの2主語を強調するもの であるのに対し、「が」は述語が相手に理解されて場合に使われる。これですべてが説明できるかは自信がありませんがかなりいい線だと思っています。

 犯人は誰だ。奴は白だ。奴は臭い。あの人が(犯人)、信じられない。
 誰がやる。俺が(やる)。お前が(やるのか)。彼は(どうだ)。やらないだろう。

犯人がわかっていない段階では「は」わかった段階では「が」使われると考えればどうでしょうか。また「やる」ことは相手も既に理解していますから( )内は不要です。誰が
が問題なのです。彼か彼女かお前か私か、私たちか。

 「吾輩は猫である」は I am a cat と英訳されていますが、逆にこれを和訳するときは「吾輩が猫である」でも誤訳とは言えないでしょう。吾輩は猫なのか犬なのか不明なので「は」が使われます。誰が、貴方が猫なのですかと述語がわかっているときは、左様吾輩が(猫である)と「が」が使われます。

2013/10/27 (Sun) 12:39 | 周作 #- | URL | 編集
Re: 生まれた目的

CHETNAさん

おひさしぶりです。
自分の幸せが10%というのは良い数字ですね。
ほとんどの人が、人生は幸せのためにあると考えていますが、その結果、自己中心的になってしまいます。
10%だと考えれば、人生観も変わると思います。

おっしゃるように安倍政権が誕生してから、暗雲から日がさしてきたような気がします。
TPP,消費税他、難問山積ですが、同じ長州人である安倍さんの大和魂を信じています。

10月からのワークショップ、がんばってくださいね。



> この頃は日本を覆っていた暗雲が少し晴れて、雲の隙間隙間に太陽の陽が差し込み、心にも晴れ間を感じるようになってきました。
>
> 10月に、戦後教育ど真ん中世代の、次の子ども世代のために、お日様の光が、そこにも十分に届くようになる事を願ってワークショップを開きます。
>
> 自分にできることを地味ながらやっていきます。

2013/09/03 (Tue) 17:30 | パック #- | URL | 編集
生まれた目的

パックさん、こんにちは。お久しぶりです。

先日の「生まれた目的」を読ませていただき、ずいぶん助けられた気持ちがしました。
それで一部を引用させてもらい、自分のブログで雑感を書きました。

この頃は日本を覆っていた暗雲が少し晴れて、雲の隙間隙間に太陽の陽が差し込み、心にも晴れ間を感じるようになってきました。

10月に、戦後教育ど真ん中世代の、次の子ども世代のために、お日様の光が、そこにも十分に届くようになる事を願ってワークショップを開きます。

自分にできることを地味ながらやっていきます。

2013/09/03 (Tue) 12:56 | Chetna #5wNULS9w | URL | 編集
Re: タイトルなし

amiさん

この子は夜になると意識が変わりますが、日中はただの9歳の子で、昼間に何かを聞いても答えが返ってきません。
何かわかったら又ご報告します。

2013/08/14 (Wed) 21:13 | パック #- | URL | 編集

バックさん、こんばんは~!
人生の目的
なんだか、引き出しってわかるような気がします。
でも、あとの3つの引き出し?なにか気になります。笑
今生の事??
次回を楽しみしています。
いつもありがとうございます。

2013/08/14 (Wed) 20:21 | ami #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

タヌ子さん

『は』と『が』の使い分けは、言語の専門家でもきちんと説明できないので、外国人が理解するのは大変だと思います。
『は』の場合は述語の方に焦点が当てられていて、『が』の場合は主語が重要であるとの説明は、多くの場合に当てはまりそうですね。

フランスのAmazonは、お急ぎ無料便はないのでしょうか。
日本人はおとなしいので舐められているのかも知れません。
クレジットで引き落とされて、それに気づかない人もかなりいるでしょうし、携帯電話の「2年間のしばりの違約金」と同じで、気づかれなければ儲けものという意識が感じられます。

2013/06/21 (Fri) 10:33 | パック #- | URL | 編集

日本語の『は』と『が』の使い分けは、外国人にとって一番難しい問題らしく、日本語学習中の外国人に必ず質問されます。
ニュアンスとして『は』の場合は述語の方に焦点が当てられていて、『が』の場合は主語が重要であると説明していますが、必ずしもそうとは断言できないところもあり、コンテクストで判断するしかないと補足していますが、そのコンテクストで判断っていうのが一番の難関ですね(笑)
帰国の度に、美しい日本語が崩壊の危機にあることを感じます。
フランスも同様で、意味的に絶対おかしいと思う言い回しがどんどん増えています。
言語は生き物なので、時代とともに変わっていくことは仕方ないと思いますが、言葉に秩序がなくなるのは悲しいことですね。
Amazonのお急ぎ無料便、ある種の詐欺ですよね。
これだけ利用者が多いのに、大きな問題にならないのが不思議です。

2013/06/20 (Thu) 17:22 | タヌ子 #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

patapataokanさん

昔のアナウンサーは容姿ではなく中身で勝負していましたが、
最近は見てくれが第一のようです。
それにしても、「は」と「が」を間違うアナウンサーが現れたのは画期的でした。

なるべくAmazonでは買わないようにしているのですが、
中古の本はAmazonでしか買えないのが残念です。

2013/06/19 (Wed) 16:00 | パック #- | URL | 編集

最近日本語がおかしいと言われていますが
「は」と「が」までアナウンサーが
間違える時代になりましたか^_^;

Amazonのお急ぎ便、私も使おうとして
年会費に気付き、使うのを止めました。

でも日本に税金が落ちないなんて知りませんでした。
これはちょっと法改正でもしてcyんと
税金が支払われるようにして欲しいです。

2013/06/18 (Tue) 22:08 | patapataokan #- | URL | 編集

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