日本語の力

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千葉県市川市の元高校教師、小関光比古さんが、「日本語の美しさ 後世まで」と題して読売新聞に投書されていました。ご紹介します。

『「雪辱」という言葉を久しぶりに耳にしました。最近は、復讐を意味する英語の「リベンジ」に取って代わられた感があります。
雪辱は「辱(はじ)を雪(そそぐ)」ということです。そこから、試合などで前に負けた相手に勝つことも意味します。雪辱には漢字ならではの美しさがあります。語感には落ち着いた響きがあり、改めて日本語の美しさに気づかされます。

在職中、高校生を対象に、流行語や若者言葉と、古来の日本語のどちらが美しいかを調査したことがあります。その結果、生徒が美しいと感じた言葉は、圧倒的に古来の日本語でした。「時雨」「五月雨」「如月」などを美しいと感じ、「うざったい」「ださい」「きもい」などは汚いと感じていたのです。
カタカナ語や略語が氾濫し、美しい日本語が消えていくことが残念でなりません。
言葉は変わりゆくものと重々承知した上で、だからこそ、美しい日本語を残していきたいという思いを強くします』



まったく同感です。雪辱には名誉を回復するという意味がありますが、リベンジの第一義は復讐であり、スポーツマンシップにふさわしい言葉ではありません。
似たような英語の乱用に「リスペクト」があります。若者たちはむやみに「リスペクトする」と言いますが、別に相手を尊敬しているわけではなく、単にはやり言葉を使っているに過ぎません。このように若者たちが無批判にはやり言葉を使う背景には、マスコミによる言葉の垂れ流しがあります。


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秋田にある国際教養大学で3年間学んでいる留学生の話です。個人主義の欧米人でありながら、一緒にいる人が少し寒そうだと思えば窓をサッと閉める心配りをします。そのような心遣いができるようになった理由について、間違いなく日本語のお陰だと言います。
日本語には、尊敬語、丁寧語、謙譲語など、相手の立場や気持ちを配慮する豊かな言葉があります。その言葉を使っている内に、相手を思いやる気持ちが身について来たのでしょう。

一例で断定するのは早計かも知れませんが、日本語であればそのような力があるのではないかと納得させられる話です。
勿論日本語であっても、汚い言葉や乱暴な言葉を覚えれば、そのような性格になるでしょう。
もしかしたら親切な人が多い、秋田の風土も影響しているかも知れません。

世界で最も豊かな言語が日本語です。
小関さんが投書で例に出された、「時雨」「五月雨」の他、日本語には、春雨、秋雨、氷雨、夜来の雨、通り雨、にわか雨、小糠雨、篠突く雨、恵みの雨など、雨に関する多くの言葉があります。
『広辞苑』には雨に関する見出し語が、何と185あると言います。こんな言語は他にありません。


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先日「舟を編む」という映画を見ました。
2012年度の本屋大賞第1位に輝いた、三浦しをん原作の、「舟を編む」の映画化ですが、とても丁寧に作られた良い作品でした。

玄武書房という出版社が、15年の歳月をかけて、24万語収録の『大渡海(だいとかい)』という辞書を作り上げていく話です。「舟を編む」とは、言葉の海を進んで行く舟である辞書を編纂することを意味しています。
主演の松田龍平は、辞書編纂に携わる、ネクラで人とのコミュニケーション能力の無い主人公、馬締(まじめ)光也を好演しており、妻となる宮崎あおいも魅力的な演技でした。


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この映画を見ていて思ったのは、『広辞苑』や『大辞林』、『大辞泉』のように、24万語を収録するような大部な辞書は、もう作れないのではないかということです。10数年の歳月と努力と費用を傾けて完成しても、買う人はほとんどいないでしょう。
パソコンで文書を作るのに辞書は必要ありません。多分、多くの人が何年も辞書を使っていないのではないでしょうか。
字を調べるのに携帯電話を使っている人もたくさんいます。

パソコンやスマートフォンに係わる時間が増え、読書人口が減っています。
簡便さには副作用があり、その追求の先には底の浅い文明があるような気がします。
日本の文化と日本人の心を作ったのは日本語の力であり、日本語を失うことは日本を失うことを意味するのだと思います。
そのことを忘れてはいけないと思います。



国際教養大学の成功のヒミツ ーセンター試験の成績は東大文系並




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コメント

Re: はじめまして

genさん

コメントありがとうございました。
ブログを拝見しましたが、目標に向かって活動中のようで感心しました。

国際教養大学に、「勉強しない若者に未来はない」という紙が貼られています。
本当にそのとおりだと思います。
頑張って下さい。

はじめまして

記事を読ませていただきながら
自分の言動を省みて、グサッときました。

味わい深い日本語を大事に使っていきたいと
思いました。

Re: 舟を編む

冬日向さん

ごぶさたしています。
「舟を編む」良い映画でしたね。
地味な題材を小説に仕上げた、三浦しをんさんの筆力にも感心します。

この映画で瑕疵と思ったのは、会ったばかりの松田龍平のプロポーズを宮崎あおいが受け入れますが、男の目から見ると、松田龍平演ずるネクラな主人公のどこが良くて受け入れたのか、全く理解できません。
多分、松田龍平に知識人としての雰囲気が感じられなかったせいだと思いますが、もしかしたら母性本能を刺激する何かがあったのでしょうか。
ともあれ、良い映画でしたね。

昨年、ほとんどの本を捨てましたが、その時、岩波から出ていた寺田寅彦全集も捨てました。
どんな文体だったか覚えていませんが、随筆が好きで全集を買いました。

「舟を編む」は娘と一緒に見に行ったのですが、主人公の部屋を、お父さんの部屋みたいだったねと言われ、あの雑然とした雰囲気の中で落ち着いていたことを思い出しました。
蔵書を捨てたことを後悔させられた映画でもありました。

舟を編む

こんにちは。

ご無沙汰しております。
「舟を編む」ご覧になったのですね! 
私はまず原作を読み感動してから映画を見て更に感動。
言葉の素晴らしさもですが、好きで好きで仕方がないことに打ち込み続ける優しい優しいひとたちの物語に感動いたしました。
おっしゃるとおり丁寧に作られた良作でした。
映画も本も知人に薦めまくっております(^^)

ここのところキンドルで無料の寺田寅彦さんのエッセイにはまっています。
あの時代の文章に使われている文字の難しいこと!端正なこと!
知性とはやはり沢山の言葉を適切に選び使うことから培われているのではと感じ入っています。それにひきかえ、、、、わたくしときたら、、、、
キンドルには辞書機能がついているので、電車の中でも読みながら辞書を引くことができ、言葉を確認しながら読み進められます。
もちろん紙の辞書も捨てがたいのですが、言葉をすぐに調べられるということで読書の幅が広がるように感じているこの頃です。
言葉の乱れ、自分でも気が付かないうちにあることなのだと思います。言葉に敏感になって頭を働かせていきたく思いました(^^)


Re: タイトルなし

amiさん

海外で生活されているamiさんは、余計に日本語の変わりように驚かれるでしょうね。

言葉が時代によって変わることは承知していますが、今は軽薄な方ばかりに変化していると思います。
テレビによって拡散されますので、一挙に悪貨が良貨を駆逐してしまいす。

聖書の、「はじめに言葉があった」と「言霊」は、多分同じことを言っているのだと思います。
すべては言葉から始まることを知っていた、昔の日本人の知恵は素晴らしいですね。
失ってはならないと思います。

バックさん
お久しぶりです。
まさしく!!同感!
特に海外に住んでいると、あたらしい日本語にびっくりさせられます。
いい言葉もあるのでしょうが、すべて短くしてしまったり、などなど。

ことだまとも言われる日本語!
今回日本に一時帰国しましたが、どの看板を見ても、カタカナだったり、ローマ字だったり、日本文字が消えている気がしました。
美しい日本語を忘れずに使っていきたいですね。

Re: タイトルなし

タヌ子さん

おっしゃるとおり、NHKのアナウンサーにも、テニオハがおかしい人間がいて驚きました。
問題は、それを指摘して直させる、内部のチェック機能が働いていないということです。
視聴者がクレームをつけなければ気づかないようです。

言葉が時代によって変わることは避けられないのですが、日本が特にひどいのだろうと思っていました。
しかしフランスや世界でも汚くなっているのであれば、、それは言葉の問題ではなく心の問題なのでしょう。
ヨーロッパの移民政策が間違っていたことが露見してきましたが、日本もその方向に進んでいるのが気がかりです。


日本語がどんどん怪しくなっている私が言うべきことではないとは思うのですが、今回帰国の際に、国営放送の一部のアナウンサーのひどい日本語には驚かされました。
とにかく『てにをは』が変なのです。
日本語のお手本であるべき国営放送のアナウンサーがそんなことでは困ります。
世界で一番美しい言語と言われてきたフランス語も、最近はアラブ語、アフリカ語、英語など、全く種を異にする言語が混じり合い、現代の若者が話すフランス語はとても同じ言語とは思えないほど、耳障りな物になってしまいました。
あの美しい響きに憧れて、フランス語を学んだ者にとっては寂しい限りです。
ギリシャ人も、若者の言葉の汚さを嘆いていました。
日本語だけではなく、多くの言語がその美しさを失いつつあるのだと思います。

Re: タイトルなし

patapataokanさん

昔、音によって植物の成長がどのように違うかをテストしたことがあります。
ある周波数を記憶させた水を与えた花は長く咲き、しかもアブラムシがみんな落ちて死んでいました。
言葉も振動数ですから、言霊があるのは当然のことです。

子供のころから美しい日本語を聞いて育つのと、怒りの言葉を聞いて育つのでは、性格が変わって当たり前ですが、子供に見せたい番組が無いテレビは、悪影響しかないのではないかと思います。

年を取るにつれて、日本の文化の奥深さに感心させられます。
言霊という考え方があるのは、多分日本だけでしょうが、昔の日本人は、すべて見えていたのではないかと思います。
不思議な民族です。

パックさんがおっしゃるように古来の日本語には
凛とした昔の武士の姿を見ることが出来ます。

背筋をスッと伸ばして畳の間に
正座してるそんな姿です。

それに反して今の若者言葉には
ダラッとしただらしない若者の姿を
連想してしまいます。

音にはいろんな効果があってバカと言われ続けて育った
カイワレ大根は苦くて辛みがあり美味しくないそうです。

一方ありがとうと言われて育ったカイワレは
とれも生育もよく美味しいそうなんです。

植物でもそうなんですから人間が
毎日聴く言葉で性格が違ってくるのは納得できます。

マスコミももっと昔の美しい日本語を
残すように努力して行って欲しいと思います。
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