お正月は百人一首

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昔、正月の遊びと言えば、カルタと百人一首でした。
カルタで遊んだのは小学校低学年まででしたが、百人一首はかなり後まで遊んでいました。
百人一首はその後、高校時代に全部覚えたのですが、単に受験のために覚えただけで、歌に対する興味はまったくありませんでした。ただ、今でもいくつかの歌を口にすることができるのは丸暗記の効用です。

今にして、和歌を子供の遊びにするとは、日本は何と芸術的な国であったことかと思います。
この素晴らしい文化が、今やほとんど顧みられることがないのは残念なことです。たとえ「坊主めくり」であっても、子供の時に百人一首に触れておけば、いつか和歌に興味を持つことがあるかも知れません。
第一、ゲームで遊んだ無数の時間のことは忘れても、家族そろって百人一首で遊んだ思い出は、きっといつまでも心に残るはずです。

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小さな子どもたちに、いきなり百人一首を与えても興味を持たないでしょうが、一茶の俳句をカルタにしたものがあります。ヴァイオリンのスズキメソードで知られる「才能教育研究会」で出している「一茶百句 俳句かるた」です。わが家の娘たちは、このカルタで飽きることなく遊んでいました。もし小さなお子さんがいらっしゃれば、是非一緒に遊んでください。

「百人一首」は、ほとんど任天堂が作っていました。その任天堂はゲーム機の主役になり大会社になりましたが、今は携帯ゲームに押されて赤字が続いています。栄枯盛衰を感じますが、任天堂の名前は、花札がばくちに使われ、運を天に任すことに由来しています。子供たちの時間を奪うゲームだけでなく、もう一度日本の文化の担い手であったことを思い出してほしいと思います。

新々百人一首〈上〉 (新潮文庫)新々百人一首〈上〉 (新潮文庫)
(2004/11)
丸谷 才一

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丸谷才一さんの著書に、「新々百人一首」があります。
「小倉百人一首」は、平安時代の公家、藤原定家が選んだものですが、「新々百人一首」はそれに代わる百首を丸谷才一さんが選んだものです。
英文学を専攻した丸谷さんの、日本の古典に対する深い知識と見識にはいつも舌を巻きますが、この著書においても、次次に示される丸谷さんの和歌に対する深い知識に圧倒されます。

下巻の巻末に、歌人の俵万智さんと丸谷さんの対談が載っていて参考になりました。
俵万智さんといえば、「サラダ記念日」の斬新な表現力が印象的ですが、この対談で俵さんの古典に対する深い知識を知りました。

一端をご紹介します。

俵 『「実は、私は高校生ぐらいまで、『小倉百人一首』にある「逢い見てののちの心にくらぶれば昔はものを思わざりけり」(藤原敦忠)という歌は、その人に逢うまでは自分は何も恋の悩みを知らなかったわ、という内容だと思っていたんですね。でも多少古典を勉強すれば、「逢う」とか「見る」という言葉が、共寝をするという意味だと分かるし、それによってさらに、解釈が深くなる。
「新々百人一首」のなかでも、村上天皇の歌「思へどもなおあやしきは逢うことのなかりし昔なに思ひけん」や寂蓮の歌「逢うまでの思ひはことの数ならで別れぞ恋のはじめなりける」では、「逢う」という言葉の意味を知らないで読むのと知って読むのとでは、ずいぶん味わい方が変わりますからね。』
  ・・・・・・・・
俵 『秋が恋の季節だということを、いろいろな歌を例に挙げて強調されていましたが、旧暦の秋は七、八、九月ですか。』
丸谷『そうですね。』

俵 『これはくだらない質問かもしれませんが、この本で「伊勢物語」第九十六段の、「秋かけて言いしながらもあらなくに木の葉ふりしくえにしこそあれ」という、秋になったら逢いましょうと約束しましたがそうはならず浅い縁でしたね、という歌が引用されていますよね。その本文を見ると、作者の女性は、「秋になったら」という理由を、体にできものができて気持ちが悪いし、夏で暑いからと言っているんです。秋が恋の季節というのは、当時クーラーやシャワーがなくて、夏の間はべたべたして気持ちが悪くてあまり一夜を共にしたくなかったからなんでしょうか。』
丸谷 『ハッハッハッ』

俵  『私、学生のころ初めてこの段を読んだときに、すごく印象に残っていたんです。逢うというのは、さっきも出ましたけど共寝をするという意味ですから、涼しくなってからにしましょうねとは、ずいぶん露骨なことを言う女の人だなと思って。何度か引用されてる歌がちょうど出てくる段の、女性のセリフだったので、思い出して読んでみて、そうなのかなと思ったんです。』

丸谷『非常にいい説みたいな気がしてきたなあ(笑)。僕はそれは考えていませんでしたねえ(笑)。』


国文科出身の人や、古典を学んだ人には常識なのかも知れませんが、逢うや見るがこう言う意味であったことを初めて知りました。たしかにずいぶん味わい方が変わります。

「逢う」ことも「見る」こともなくなった人も、いまだ逢い見ている人も、たまには百人一首で遊びましょう。


コメント欄を開けることにしましたが無視してください。






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コメント

Re: タイトルなし

Yumiさん

子供の頃、お正月になると百人一首で遊びましたが、上の句を読んで下の句を取る遊びは、ほとんど姉たちに取られていました。
坊主めくりは覚えて無くてもできるのでよく遊びましたが、たしかに坊主はそこに何が書いてあるか関係なくいやな札でした。
今から見ると坊主の方が趣のある歌を読んでいますね。

Yumiさんは小学校の時、全部覚えたのですね。
私が全部覚えたのは大学入試のためでした。
高校時代は空手ばかりやっていて、本当にがさつな人間でした。
平安時代の歌を使った遊びが残っているのは本当に日本らしく素敵なことです。
Tちゃん、Rちゃんにも、ぜひ伝えてください。



2013/10/11 (Fri) 18:23 | パック #- | URL | 編集

今頃こんなところにコメントです(^^)
実はわたし百人一首大好き♪子供のころの担任の先生が百人一首クラブの先生でクラスの半分くらいの人は100枚全部覚えてました(^^)
で、やっぱり子供にも百人一首伝えたいと思ってフリーマーケットで安く出てたので買っちゃったんですよね(^^)といってもすぐに上の句読んで下の句とる遊びはできないからやっぱり坊主めくり(^^)Tちゃんも一緒になってきゃ~~ボージュー言って遊んでます(^^)そんな遊びをしてたからかやっぱり姫の絵柄の札が一番すきです(^^)そして坊主みるとにっくき坊主め~~なんて感じになっちゃいますが、子供のころに覚えたので歌は覚えていてもそれが姫の札か坊主なのかまで全然覚えてなくて、今頃になってあらこれよく覚えている歌だけど坊主なのね~~なんて思ったりしながら子供と坊主めくりやってます(^^)今ではお正月以外でも☆そのうち読んだ札をとる遊びができるようになるのが楽しみです(^^)
ヒマが色々な文学を生み出したという今日読んだ記事もまた興味深くてフムフムと読んでしまいました(^^)

2013/10/11 (Fri) 13:07 | Yumi #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

タヌ子さん

任天堂はNINTENDOになったんですね。
私の学生時代、学生課の壁に任天堂の就職情報が貼られていたことを良く覚えています。
無論、花札の会社に応募する気は起きなかったのですが、その後ファミコンで巨大企業になった時、あの任天堂がと驚きました。

子供のころ、お正月は百人一首でした。
歌の意味はわからなかったのですが、家族揃って打ち興じた時間が楽しく、貴重な思い出です。

2013/01/13 (Sun) 08:42 | パック #- | URL | 編集

百人一首の多くが任天堂の製品だったとは知りませんでした。
おそらく私が子供の頃に遊んだ百人一首や花札も任天堂のものだったんですね。
今や任天堂は、私の中ではNINTENDOになってしまい、その名前の由来を考えることもありませんでしたが、字をもう一度しっかり見て納得。
子供の頃は歌の意味など分からず遊んでいましたが(逆に意味を理解していたら怖いですよね・・・笑)、もう一度一首一首じっくり読んでみたくなりました。
私の涙が染み付いた(姉と取り合いになり、負けては泣いていた)百人一首も、数年前までは甥と姪が仲良く遊んでいたけれど、成長した現在、きっとどこかに仕舞い込まれてしまったのでしょう。

2013/01/13 (Sun) 00:31 | タヌ子 #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

patapataokanさん

百人一首は坊主めくりだけでも遊べますよ。
ただし、坊主の札が嫌いになりますが。

この一茶のカルタは絵が可愛くてお勧めです。
子供たちは動物の入った句が好きで、すぐに覚えます。
nanaちゃんがもう少し大きくなったら、是非一緒に遊んでください。

俵万智さんの「サラダ記念日」の、
「トンカツにソースをじゃぶとかけている生命線の深き右手で」
という句が好きですが、これほど深い学識の人とは知りませんでした。

2013/01/09 (Wed) 17:20 | パック #- | URL | 編集

百人一首は息子達が小さい頃買ってまだ置いてあります。
ちょっと子供には難しすぎて数回やっただけでした。

でもパックさんんがおっしゃってるように
日本の文化を次世代に伝える素晴らしい遊びだと思います。

もっと一般に遊べるようになれば古典の苦手
意識を持つ子も減るかもしれませんね。

英語の早期教育も大事ですが自国の
文化ももって大事にして欲しいものです。

「一茶百句 俳句かるた」は知りませんでした。
nanaちゃんに買ってあげてもいいですね(^^

俵万智さん、一流に成る方はやはり
いろんなことに秀出ておられてるんだなと
思いました。

2013/01/09 (Wed) 17:07 | patapataokan #- | URL | 編集

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