日本人と唐辛子

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京都吉兆

七味唐辛子に日本人の知恵が現れているのではないかと考えたのは、一味唐辛子が出てきてからです。
唐辛子はただ辛いだけで風味がありません。コロンブスがメキシコで発見し、ヨーロッパに持ち帰った時は、コショウのような風味が無いため受け入れられず、江戸時代に日本に入って来た時も、繊細な日本料理には合わないため、観賞用として栽培されたそうです。

その後、うどんなどの香辛料に使われ始めた時も、その風味の無さに我慢できず、山椒、黒胡麻、ちんぴ、麻の実他を配合して、七味唐辛子にしたのではないかと思います。そこに日本人の味覚の鋭さと知恵が現れています。

しかし七味唐辛子も十分風味があるとは言えないのに、その後の改良工夫がなかったのは、日本人の知恵が足りなかったのではなく、唐辛子に対する思い入れが少なかったからでしょう。
一味唐辛子は七味唐辛子の工夫を否定するものですが、激辛ブーム以降、日本人の味覚は低下したのではないかと思います。

尚、これが七味唐辛子だと感心させられるものがありますのでご紹介します。
やげん堀七味唐辛子


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京都吉兆

日本文化すべてに共通する価値観は美しさです。料理は美しくなければならず、それは料理の手順や器や盛り付けなど細部に至るまで要求されます。
味が美しいと書いて「美味しい」と読みますが、その言葉の中に日本人の感性が現れています。身体が美しいと書いて「躾」と読むのと同様、規律や規則性の中に美しさがあると考える日本人の特質だろうと思います。

過日、娘がIKEAで包丁を買ってきました。デザインの面白さで買ったようですが、その切れなさは笑いが出るほどでした。IKEAに限らず、世界で絶賛される日本の包丁と比較すれば、どの国の包丁も切れません。
包丁には日本人の美意識と英知が結集しています。

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西洋の包丁は両刃ですが、日本の包丁は片刃です。日本料理は陰陽の考えを基本にしており、刃がついている方を陽、ついていない方を陰と考えます。刺身は刃(陽)で切られた面を返して、表に向けて盛りつけます。
陰陽五行では、偶数は陰、奇数は陽と考えます。刺身を盛る時、陰数の四角い器に盛る時は、3切れ、5切れなど陽数で、ふぐ刺しのような数がわからない場合は、陽である丸い器に盛るのが基本です。

日本人の陰陽の考え方の中心にあるのは調和です。料理の手順、器、盛り付け、あるいは部屋の調度などの全てが調和して料理は完成すると考えます。
フランス料理の食器、盛り付け、味のハーモニーは、日本料理にもっとも近いのではないでしょうか。
世界の108のミシュラン三つ星店のうち、1/4が日本にあるのも当然のことです。
調和を基本とする和食の本質を、いつまでも大切にしてほしいと思います。

丸谷才一さんのエッセイ、「あの無思想に燃えるもの」の中で紹介されていた、現代女流の俳句をご紹介します。

「思想などなし唐辛子赤きのみ」 諒子

日本料理の陰陽の考え方は記憶で書いたので間違っているかも知れません。
ご指摘をいただくために、コメント欄を開けておきます。





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コメント

Re: タイトルなし

amiさん

日本料理は素晴らしいと、年をとるに従ってそう思います。
当たり前ですが、日本人にしかできない料理ですね。

ご主人はコックさんですか。
やはり日本の包丁はお気に入りなんですね。
包丁でもカンナでも、日本の職人の作るものはみんな素晴らしいです。
手を抜かないし、職人の誇りを持っています。
こんな国はないですね。

2012/10/23 (Tue) 22:14 | パック #- | URL | 編集

バックさん
お久しぶりです。
日本料理は今日もいただきましたが、ほんとうに姿にもこだわりがあり、すばらしいです。

包丁!!主人はコックなので、わたしが日本で購入した包丁がやはりいいといい、仕事場に持っていかれました(笑)
陽と陰のことは初めて聞きました。
今回の日本での主人へのお土産も実は包丁!!笑

2012/10/23 (Tue) 19:59 | ami #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

patapataokanさん

日本料理は、おいしくて、きれいで、健康に良い、理想の料理だと思います。
しかし最近の若い女性は、日本料理の作り方を知らない人が多く、このままだと和食は外食でしか食べられない時代が来るのではないかと心配になります。

事実、もうお節料理は買うものと決めている家庭が増えてきましたね。
日本の伝統には日本人の叡智が詰まっていて、いつまでも継承してほしいですね。

2012/10/23 (Tue) 09:43 | パック #- | URL | 編集

包丁に陰陽があるのは初めて知りました。

でも日本料理は見た目だけでなく
料理法、味付けで陰陽見事に調和させた
料理だと思います。

しかも季節に合わせて同じ食材の
もの、例えば豆腐なら夏は冷や奴で陰。

冬は鍋にして温めて陽の食材にするなど
四季のある日本ならではの工夫も見られます。

一時期は洋食が格好のいいもので
和食がダサいもののように言われていましたが
やっと和食の良さが見直されてきたのは嬉しいことです。

最近、自己主張ばかりして調和のない方も
多いようですが日本料理のように調和や謙虚を美徳とする
日本の文化をもっと見直して欲しいものだと思います。

2012/10/22 (Mon) 23:12 | patapataokan #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

タヌ子さん

日本の職人は、すべての技術を極限まで追求し、芸術的なレベルまで高めていますが、中でも和食は総合芸術と言っても良いのではないかと思います。
フランスの超一流のシェフは、日本の料理に深い敬意を払っていますね。
ロブションが寿司の数寄屋橋次郎を訪ねる映像を見ると、お互いが尊敬し合っているのがわかります。
と言っても、ロブションが和食の全体像を知っているかどうかはわかりません。
良く切れる日本の包丁を日曜大工に使用したい気持ちもわかりますが、できればIKEAの包丁にしてほしいいですね。

2012/10/22 (Mon) 23:09 | パック #- | URL | 編集

和食は本当に奥が深いですね。
包丁の陰陽については全く知識がないので、何もコメントできませんが、帰国の旅に和食の繊細さを再確認します。
最近はアメリカやヨーロッパでも『和』の食材や手法を用いた料理が人気ですが、西洋のシェフ達はは見かけの美しさだけではなく、本当の『和』の美味しさが分かっているのだろうか?という疑問を抱かずにはいられません。
和食はスパイスに頼らず、その食材の美味しさを最大限生かす料理ですが、それは日本人が鋭い味覚の持ち主で、食材そのものの味をきっちり感知できるからなのでしょうね。
仏人の夫は、味付けが薄いと『味がない』と言いますが、私は食材の味が強調されてさらに美味しく感じます。
私が大事に日本から持ち帰った包丁を、夫が日曜大工に使用し、刃の一部が欠けてしまった時は、真剣に離婚を考えました(笑)

2012/10/22 (Mon) 22:36 | タヌ子 #- | URL | 編集

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