日本人の優しさ


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北海道で親子が暴風雪に巻き込まれ、父親は9歳の娘に覆いかぶさるようにして凍死していました。
亡くなった岡田幹男さんは一昨年、妻を亡くし、一人娘の夏音さんと2人暮らしでした。
夏音さんは父の胸の中で泣き続けていたといいます。

2年前に母を亡くし、またこのような形で父を亡くした夏音さんの気持ちは、察するに余りあります。
幼くしてつらい経験を重ねた夏音さんが、これから多くの優しい人達に助けられて、明るく成長することを願わずにはいられません。

以前、ホームレスの若い女性のことを書きましたが、公開していない関連記事がありましたのでご紹介します。(最近、過去の記事をほとんどチェックしていないので、書いたのを忘れていました)
下記の関連記事もご覧ください。

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その女性のことを忘れていた11月の終わり頃、娘が駅で半袖で震えながらうずくまっているのを見かけました。
思わず駆け寄って自分の上着をあげようとした時、駅の係員が近寄って来たので逃げ出したと言います。
やはり以前のまま、保護されずにいたのです。

翌日、受け取るかどうか心配しながら、娘が自分の衣類を持って行ったところ、素直に受け取ったと言います。その話を聞いて喜んだのですが、数日後、その女性がやはり薄着のまま、駅で同じように立ちすくんでいたと言います。

しかしその日の夜に再び見かけた時には、ちゃんと服を着ていたといい、もしかしたら、日中は薄着で同情を誘い、施しを受けていたのではないかと思います。しかしもしそうであれば、それはそれで生きるすべを知っていることになり、少し気が楽になります。


日本教育界最大の人物と言われた森信三先生が、シベリア送りになりかけた時、零下20度の厳寒の中で新京を脱出しました。食料もなく生死をさまよい、凍死、餓死寸前のところで命を取り止めましたが、このとき改めて、躾、たしなみ、道徳というものは、ある程度の経済的基盤があってこそ可能だと思い知らされます。

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人生二度なし」致知出版社


若い時の貧しさは、必ずしも心を貧しくするものではありません。むしろ、「かわいい子には旅をさせろ」のことわざ通り、自立して生きる強さを育てます。
心に従って生きる」で紹介した知人の話です。

彼は医学部を中退して仕送りを絶たれました。アルバイトだけで下宿代と生活費を稼ぐことは困難です。ある朝、空腹を抱えて歩いていると牛乳箱が目につき、思わずその牛乳に手をつけてしまいました。飲んだ後、お腹がすいて牛乳に手を付けてしまったことをお詫びし、アルバイトの金が入ったら必ずお返ししますと、住所・氏名を書いたメモを入れて帰りました。

後日、お金を返しに牛乳箱を開けたところ、中に2本の牛乳とメモが入っており、「1本はあなたのものだから、いつでも飲んでください」と書いてありました。
その後、会ったことも無いその家の人とは、何回もメモのやり取りをし、励ましてもらったと言います。


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別の日の朝、彼が大徳寺の山門にたたずんでいると、朝行に出る僧侶の一団が歩いて来ました。
先頭の僧侶が彼を見かけ、肩をトントンと叩き、手を出すように促します。彼が手を出すと小銭を入れ、その後に続く僧侶たちも、一人ひとり小銭を彼の手の中に入れて行きました。彼の姿に窮状を察したのでしょう。
「僧侶の数が多いので、手の中が一杯になりました。托鉢の僧から布施をもらったのは、僕くらいでしょう」と笑っていました。

学生時代から金や地位や名誉を遠ざけてきた彼は、その後、ドイツとスイスで長年生活し、10数年前に日本に帰ってきました。北辰一刀流の免許皆伝で、少林寺拳法の有段者、ギターの名手にして円空仏や陶器の鑑定家である彼は、つくづく医者にならなくて良かったと言っています。
彼がスイスでダライ・ラマの妹さんと出会い、中国大使館に抗議のロウソクデモを行った話はまたご紹介します。

僅かな優しさ、思いやりが人を救い、人の人生を左右することがあります。
美談の多さは、その国の人々の優しさのバロメーターです。かっての日本には数えきれない美談がありました。
それが失われたと思っていたところ、東日本大震災で数多くの美談が伝えられました。
いまだに日本は、優しい人達の住む国であることを誇りに思います。

関連記事

日本人は死んだか
若い女性のホームレス
猫とウサギ






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コメント

Re: ありがとうございます

あいこさん

留学中に仕送りが止まり、よく卒業までがんばられたものだと思います。
若い女性が、16キロの道を毎日通うことの大変さは、想像を絶することです。
それを見ていて救いの手を差し伸べてくれる人、ジュースのビンを投げて嫌がらせをする人、世の中には様々な人がいますが、自分の行った結果はすべて自分に返ってきます。
ビンを投げた人には、それなりの結果が返っているはずです。

キリスト教の慈善事業が定着しているアメリカでは、自分の人生を放棄すれば、施しで生きていくこともできるのでしょう。
その救いの中で前向きに生きていくことは、余程の向上心や情熱を持たなければ難しいことだと思います。
あいこさんは、日本人のプライドをもって頑張られたのだろうと思います。

日本人の精神的な荒廃を嘆かわしく思っていましたが、これから教育によって日本精神の復活が起き得るのではないかと、最近少し希望を持っています。

人は自分の人生を計画して生まれてくると言われていますが、夏音さんの身に起きてきた不幸を、自分で決めてきたと無慈悲に言う事は誰もできません。
しかし自分の不幸を嘆いたり、人のせいにするのではなく、逆に自分に与えられた試練だと考えることができれば、人生は積極的なものになるのだと思います。
夏音さんの人生が、そのような人生になることを願っています。

今回の記事は、以前に書いて忘れていたものですが、あいこさんに見ていただけたことをうれしく思います。
ありがとうございました。

ありがとうございます

私は、アメリカ留学中に突然、仕送りが止まったことを思い出しました。なんとか卒業したくて、必死でした。16キロを毎日歩いて学校に通ったので、靴は穴だらけ。よく歩いている私を見ていた見知らぬ方がたが何足が靴を下さった時は、見てる人がいるんだという驚きとともに、その思いやりがとても嬉しかったです。歩いていると、高校生などにジュースの入っているボトルを頭にぶつけられて、からかわれることもあったのでなおさらでした。

教会でホームレスの方々と食事をすることも多く、貧しいなか親切な人もいたけれど、教会の人々のサポートを当たり前とし、現状に対してそのままでいいと考えている人もいました。社会がかれらのやる気を奪ってしまったのか、それは個人の問題なのか、考えさせられることもありました。ただ、優しさで元気をもらえるか、心の糧になるか、当たり前の事と日常化してしまうかは、個人の心が決めるんだなと感じてます。

私は、知っていて今も御礼が言える人や、見ず知らずの方々の優しさによって、自分を見失わずに卒業できたので、苦しかったけど、いい経験になりました。

今、日本に帰ってきて、優しさ、とくに見ず知らずの人への優しさを感じられず、見ないふりの人が多いことに、このままで大丈夫なのかと思っていたので、この記事に出会えてよかったです。ありがとうございます。

幼くご両親を失ってしまった夏音さんのこれからがきがかりではありますが、岡田さんの無償の愛情がこれから生きていくうえで彼女にとって大きな糧になってほしいです。不謹慎ではありますが、いつも条件つきの愛情で育った私は、自分の命を懸けて子供を守る無償の愛が羨ましくも感じました。

Re: パックさんへ!!

荒野鷹虎さん

本当に悲しい出来事でした。
多くの父親が同じことをすると思いますが、二人で支えあって生きてきた親子に起きた事件であることが、余計に悲しさを深めていました。

今から見れば昔は貧乏でしたが、そのことをつらいと思ったことはありませんでした。
それよりも社会全体が希望を持って生きていました。
人間にとって一番大事なことは希望であることを、今にして思います。

パックさんへ!!

先日の北海道の暴風雪は数年に一度と言うひどいものでしたが、この親子の死して子を守る姿に感動いたしました。私の札幌でも、屋根からの落雪による事故が多くあリ悲劇が続きました。

私達の時代は多くは貧しく、自給自足の生活でした。しかし、仰るとおり現代の飽食時代より強く明るく育ちました。寧ろ他者を思いやる気持が発達した気が致します。
感動的なお話有難うございました。!

Re: タイトルなし

タヌ子さん

私の母も「『若い時の苦労は買うてでもせよ』と、よく言っていました。
しかし買うどころか、できれば売りたいと思って生きてきた結果が今の自分ですから、
やはり昔の人の言うことに間違いはないですね。

牛乳の話は古き良き時代を感じる話ですが、京都の特殊性もあると思います。
われわれのいた頃、京都は学生と坊主の町と言われ、学生は温かい目で見られていました。
今、牛乳はスーパーでパック入りを買う時代ですから、こういう美談は生まれませんね。
今だったら彼は行き倒れになっていたかも知れません。

夏音さんは、本当に幸せになってほしいと願います。



ホームレスが人の同情を買うような行為をするのは、世界共通のこと。
杖をついて背中を丸めたホームレスが、普通に歩いている姿を見てしまった時は正直ムッとしましたが、パックさんが仰るように、生きる術と考えれば、騙されたと腹を立てる方がおかしいですね。
すぐに不平不満を訴える私に、母は「『若い時の苦労は買うてでもせよ』と言うでしょ!」と繰り返して言っていましたが、結局苦労からは適当にのらりくらりと逃げて暮らしてきてしまいました。
本当の意味での苦労を知ってこそ、人に対する優しさが生まれてくるのですよね。
牛乳の話、心が温まりますね。
きっと牛乳の贈り主も、若い頃に苦労された経験があるのでしょう。
フランスでもホームレスに温かい手を差し伸べるのは、お金持ちではなく、自らもその経験を持ち、今は苦しいながらも自分の家と呼べる場所で生活している人々です。
夏音さんは常にお父様の体温を感じながら、まっすぐ、逞しく成長していってくれると思います。

Re: タイトルなし

patapataokanさん

亡くなられた岡田さんのこと、本当に心が痛みます。
娘さんを残して死ぬことが、さぞかし心残りだったと思います。

残された娘さんは、近くに身寄りがないようですが、
北見に親戚があるので大丈夫だと、気丈に話していたようです。
何とか周りに助けられて、幸せに生きてほしいと願います。

子供の頃、近所で醤油や調味料の貸し借りを、当たり前にしていました。
困った時はお互い様という助け合いの心が、どの日本人の中にもあったように思います。
貧しいから助け合ったのかも知れません。

戦争に負けて良かったと言う人がいますが、そんなことはありません。
戦争に負けて日本人は死にました。
しかし、教育によって復活できると思っています。
安倍さんに期待しています。

北海道の岡田さん親子のことは新聞で見ました。
自分を犠牲にしてまで子供を守る。

これが本当の親としての姿だと思います。
昨今の子供を虐待している親に読ませたいと
思いました。

ただ、残された娘さんが気がかりです。
お母さんも病死されるし兄弟もいず
身寄りがないと聞きました。

ただ、どんな状況になっても命をかけて
守ってくれたお父さんのことを思い出して
頑張って欲しいと思います。

パックさんがおっしゃるように昔の
日本人は生活が貧しくとも心は豊かだったと思います。

今の日本、生活は豊かになりましたが
大事なものを失ってしまったように
思えてなりません。

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